蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜愛し子〜‡
『フェリス様は父が憎くないのですか?』
ストレートに問いかけられ、一瞬何を言われたのか分からなかった。
『憎んでいないわ』
それが本心だった。
侍女も下がらせ、今この部屋にはリュスナと私だけ。
偽る必要はない。
『私…あの方を愛しているわ…。
信じられないって顔ね』
『っいえ…でも…』
『ふふっ、そうね…見えないかもしれない。
けどね…確かに愛していたのよ』
『過去形…ですか?』
『ええ、そうね…正確には”愛していた”よ。
だって、どれだけ想っても、あの方に愛される事はないって知ってしまったんですもの』
『解らないのですが…そもそも、どこを気に入られたのですか?』
『顔かしら?
っほらっもう、そんな顔しないで。
見た目は大事よ。
それにそれだけじゃないもの…お寂しそうだったの…女としてはね、妻に選ばれたんだもの、夫を癒す存在でありたいわ』
『…そう言うものですか…?』
『ええ、貴女にもきっと分かる時がくるわ』
『フェリス様は、国の…お父上の命令で嫁いでこられた。
政治的な意味合いが強いと思っていたのですが…』
『そうね。
実際、父上もあの方もそのつもりで私をこの国へと嫁がせたのよ。
でも良いの、私はそう思っていないもの』
私は沢山いる妻の中の一人。
丈夫な子どもが欲しいと望むあの方に、父上が差し出した生け贄。
愛されない事に落胆して、とうに熱も覚めてしまったけれど、憎む事はできなかった。
『…フェリス様…国へお帰りください』
『?どうしたの?』
『この国はもう駄目です。
日々破滅へと進んでいる。
私はこの国の皇女として、今まで民達に何もしてこなかった…そろそろ役目を果たすべき時です。
……私は…父を殺します…。
民達の意思をまとめて、国を開放します。
貴女には生きて欲しい…父を愛してくれた貴女に…マルスとシリスもまだ幼く、未来がある……だから…』
『…わかりました。
では、先ず私だけ国に戻ります。
マルスとシリスはこの国の皇子、皇女です。
見届ける責任がある。
全て成し遂げたら、私の子どもを届けて下さい』
『わかりました』
その時のリュスナの顔を私は忘れない。
強い決意と、その目に宿した未来を見る輝き。
私はなぜあの時、もっとちゃんとその先を知ろうとしなかったのだろう。
せめて伝えれば良かった。
”貴女も私の大切な子どもよ”と
『フェリス様は父が憎くないのですか?』
ストレートに問いかけられ、一瞬何を言われたのか分からなかった。
『憎んでいないわ』
それが本心だった。
侍女も下がらせ、今この部屋にはリュスナと私だけ。
偽る必要はない。
『私…あの方を愛しているわ…。
信じられないって顔ね』
『っいえ…でも…』
『ふふっ、そうね…見えないかもしれない。
けどね…確かに愛していたのよ』
『過去形…ですか?』
『ええ、そうね…正確には”愛していた”よ。
だって、どれだけ想っても、あの方に愛される事はないって知ってしまったんですもの』
『解らないのですが…そもそも、どこを気に入られたのですか?』
『顔かしら?
っほらっもう、そんな顔しないで。
見た目は大事よ。
それにそれだけじゃないもの…お寂しそうだったの…女としてはね、妻に選ばれたんだもの、夫を癒す存在でありたいわ』
『…そう言うものですか…?』
『ええ、貴女にもきっと分かる時がくるわ』
『フェリス様は、国の…お父上の命令で嫁いでこられた。
政治的な意味合いが強いと思っていたのですが…』
『そうね。
実際、父上もあの方もそのつもりで私をこの国へと嫁がせたのよ。
でも良いの、私はそう思っていないもの』
私は沢山いる妻の中の一人。
丈夫な子どもが欲しいと望むあの方に、父上が差し出した生け贄。
愛されない事に落胆して、とうに熱も覚めてしまったけれど、憎む事はできなかった。
『…フェリス様…国へお帰りください』
『?どうしたの?』
『この国はもう駄目です。
日々破滅へと進んでいる。
私はこの国の皇女として、今まで民達に何もしてこなかった…そろそろ役目を果たすべき時です。
……私は…父を殺します…。
民達の意思をまとめて、国を開放します。
貴女には生きて欲しい…父を愛してくれた貴女に…マルスとシリスもまだ幼く、未来がある……だから…』
『…わかりました。
では、先ず私だけ国に戻ります。
マルスとシリスはこの国の皇子、皇女です。
見届ける責任がある。
全て成し遂げたら、私の子どもを届けて下さい』
『わかりました』
その時のリュスナの顔を私は忘れない。
強い決意と、その目に宿した未来を見る輝き。
私はなぜあの時、もっとちゃんとその先を知ろうとしなかったのだろう。
せめて伝えれば良かった。
”貴女も私の大切な子どもよ”と