蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜不安な道行き〜‡

「良いのか?
お前はあのまま精霊王の所にいた方が良かったんじゃないか?」
「良いだろ、ちょっとでも早くねぇちゃんに会いたいし、柚月だけじゃ”ココロモトナイ”しな」

こちらに来て二日目。
精霊王の森で半日滞在し、イルと同じナルス逹と楽しそうにしていた快の様子を思い出して提案してみれば、憎たらしい返事が返ってきた。
ムッとしながらも、無意識に胸の内ポケットに手を触れる。
精霊王から託された”石”。
それを旧カルナ国に向かった蒼葉に届けてほしいと言われたのだ。
こちらとしては、蒼葉を迎えに来たのだから、会えなくてはお話にならない。
待っていれば、この森に来るだろうが、時間が惜しいのだと言われ、至極もっとも、同感だ。
のんきに待つつもりは更々ない。
その上、今蒼葉が一緒にいると聞かされた同行者は、彼女のかつての”師”と”魔女”、かなり不安だ。
二人共に”リュスナ姫”と関係の深かった人物だとの話に、不快感を覚えた。
交遊関係がどうのと言うつもりはないが、面白くないものは面白くない。
彼女は”蒼葉”であり、”リュスナ”である必要はもうないのだ。
蒼葉には、”蒼葉”として生きて欲しい。
その隣にあるのは、”柚月春臣”自分一人で十分だ。
また重荷を背負わせる事は断固として阻止しなければならない。

「イルは、蒼葉様と一緒に居ると言う”師”と”魔女”には会ったことがあんのか?」
《みみゅ〜ぅ〔あるよ〜〕》
「へぇ〜どんなやつ?」
《みみみぃ〜みみみむ〔きれいで〜くちのわるいおとこのししょう〕》
「キレイで男?」
《みみみむ〜ぅ〔ななひゃくちかいけどきれい〜〕》
「七百っつた?
ジジィじゃんっ」
《みゅむみみ〔えるふのこんけつだから〕》
「…エルフか…成る程…」
「エルフっ?!
まじ?!いんの?!
そんじゃあ、もう一人の”魔女”ってのは?」
《みみみみゅ〜〔きたの”まじょ”さまはきまぐれよ〜〕》
「きた?ああ、北か…気難しいが、他の魔女逹と違ってよく人里に降りてくるとか言われていたな…」
「なんで知ってんだよ?!
何か柚月、鍵を持って帰ってきた時から微妙に変だぞ?」
「…いいだろ、別に…大人の事情ってやつだ」
「ふぅん…?
いいけど」

早く蒼葉に会いたい。
だが、俺は打ち明けられるだろうか。
”バルト・オークス”そう呼ばれていた者が俺だと言う事を…。



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