蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜夢見〜‡
こっちに来てから、何だか落ち着かない。
胸は常に高鳴るし、頭はもやもやとはっきりしない。
眠れば、奇妙な夢を必ず見る。
普段ならば目を覚ましたと同時に忘れてしまうのに、焼き付いたように記憶に残っている。
俺は、夢の中では女だった。
双子の兄貴がいて、母親はもの凄くキレイな人だ。
父親は王で、恐くて嫌いだった。
そして大好きな姉がいた。
母親の違う姉は、強くて格好良くて、誰もが期待し、願っていた。
国を憂いる臣下逹は、姉ならばきっと荒廃し続ける国を父王の手から救ってくれるだろうと…。
腹違いの兄姉逹や妃逹は、姉こそが他の誰よりも次期王に相応しい者だと…。
そんな勝手な期待や願いを押し付けて、誰もが現状を放棄していた。
あの日、予知の力が突然見せたのは、大好きな姉が剣に貫かれて死ぬ光景だった。
いつもならば、突発的に発動してしまうその能力に怯え、見えた光景を忘れようと、部屋の隅で丸くなり、落ち着くのを待つと言うのに、突き動かされるまま部屋を飛び出し、数える程しか行った事のない姉の部屋へと迷うことなく辿り着いた。
驚いた様に目を見開く姉がどうしたのかと問いかける前に飛び付き、大声で泣いた。
『死なないでっ』と言うだけで精一杯だった。
抱きついた両手で、確かにここに姉が存在しているのだと確認し、優しく背を撫でてくれる温かい手に、生きている事を確信する。
泣きつかれて気絶するように眠ると、次に目覚めた時には母の姿がなかった。
『フェリス様には、国に帰ってもらったんだ。
寂しいとは思うけれど、我慢してほしい。
その変わり、ミリ逹が傍にいるから』
『でも、おねぇさまの侍女よ?』
『うん。
私は、しばらく出かけるから、城にいない。
だから、ミリ逹を頼むよ』
『どちらに…?』
『内緒だ。
けど、ちゃんと帰ってくるよ。
少しの間会えないけど、待っていて。
フェリス様にもちゃんと会えるようにするからね』
それが姉の最後の言葉だった。
次第に遠ざかっていく城が炎に包まれていく。
初めて外から見た城は、真っ赤に色付いていた。
侍従や侍女、騎士逹が今すぐにでもとって返して姉の傍に行きたいと思っている事は痛いほど感じるけれど、その衝動を抑え、私と兄を引っ張っていく。
主人である姉の命を守って。
私は姉がどうなるのか分かっていても、どうする事もできなかった。
こっちに来てから、何だか落ち着かない。
胸は常に高鳴るし、頭はもやもやとはっきりしない。
眠れば、奇妙な夢を必ず見る。
普段ならば目を覚ましたと同時に忘れてしまうのに、焼き付いたように記憶に残っている。
俺は、夢の中では女だった。
双子の兄貴がいて、母親はもの凄くキレイな人だ。
父親は王で、恐くて嫌いだった。
そして大好きな姉がいた。
母親の違う姉は、強くて格好良くて、誰もが期待し、願っていた。
国を憂いる臣下逹は、姉ならばきっと荒廃し続ける国を父王の手から救ってくれるだろうと…。
腹違いの兄姉逹や妃逹は、姉こそが他の誰よりも次期王に相応しい者だと…。
そんな勝手な期待や願いを押し付けて、誰もが現状を放棄していた。
あの日、予知の力が突然見せたのは、大好きな姉が剣に貫かれて死ぬ光景だった。
いつもならば、突発的に発動してしまうその能力に怯え、見えた光景を忘れようと、部屋の隅で丸くなり、落ち着くのを待つと言うのに、突き動かされるまま部屋を飛び出し、数える程しか行った事のない姉の部屋へと迷うことなく辿り着いた。
驚いた様に目を見開く姉がどうしたのかと問いかける前に飛び付き、大声で泣いた。
『死なないでっ』と言うだけで精一杯だった。
抱きついた両手で、確かにここに姉が存在しているのだと確認し、優しく背を撫でてくれる温かい手に、生きている事を確信する。
泣きつかれて気絶するように眠ると、次に目覚めた時には母の姿がなかった。
『フェリス様には、国に帰ってもらったんだ。
寂しいとは思うけれど、我慢してほしい。
その変わり、ミリ逹が傍にいるから』
『でも、おねぇさまの侍女よ?』
『うん。
私は、しばらく出かけるから、城にいない。
だから、ミリ逹を頼むよ』
『どちらに…?』
『内緒だ。
けど、ちゃんと帰ってくるよ。
少しの間会えないけど、待っていて。
フェリス様にもちゃんと会えるようにするからね』
それが姉の最後の言葉だった。
次第に遠ざかっていく城が炎に包まれていく。
初めて外から見た城は、真っ赤に色付いていた。
侍従や侍女、騎士逹が今すぐにでもとって返して姉の傍に行きたいと思っている事は痛いほど感じるけれど、その衝動を抑え、私と兄を引っ張っていく。
主人である姉の命を守って。
私は姉がどうなるのか分かっていても、どうする事もできなかった。