大好きな君と
「あちゃー!今日傘忘れちったぁ~」

靴箱の中から靴を取り出し、外を見つめながら明香が言った。

「彼氏に入れてもらえぇ~!」

私は、冷やかし半分に明香の背中をたたくと、こちらを向いて、うんっと大きく可愛い笑顔を作り、圭ちゃ・・・圭吾の方へと向かい、2人は同じ傘に入りながら、仲良く学校を出て行った。

私は圭吾へと呼び名を変えた。
あれ以来、カフェには行ってもないし、行き方も忘れた。

私も、『あんな、ロマンチックな事したいな』と思い、バッグの中に入れていた
折り畳み傘を取り出さず、そのまま、一歩、一歩と濡れた地面に足を踏み入れる。

後ろからバシャバシャと水を含んだ運動場を走る音がすると
黒の車が校門に止まった。

まるで帰ろうとする、生徒たちを帰らせないように。

あの車・・・夏休み見たっ!


そう、花柳華恋だった。


私は頭の中に一つの輝くものが浮かび上がった。

「あっ!」

招待状・・・パーティー・・・
忘れていた。

とほほ、1人で笑いながら家に帰る。

夏に圭吾ととおった並木道。赤い紅葉が雨に打たれてしんなりとなっている。
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