Do you love“me”?
あの試合の日、タクシーに乗り込んでしばらくしてから、おねぇーと航太君の存在を思い出して、ハッとした私。
「りょ、稜君!!」
「え?」
少し慌てる声を聞いて、窓の外に向けられていた稜君の視線が私に移される。
目が合って、それまで以上に意識してしまった、繋がれたままの手。
自分から声をかけたくせに、つい目を見開いてしまった。
そんな私に気付いてか、ちょっと笑いながら手を離した稜君は「どうしたの?」と、私の顔を覗き込みながら、優しく声をかけたんだ。
「あ、あのね! おねぇーと航太君が、すごい心配してたの!!」
「へ?」
「稜君が、急にいなくなっちゃったって……」
その理由を知っていたから、言葉尻が小さくなってしまう。
だけど稜君は、私の様子にちょっと困ったように笑うと、「ありがとう」と私に声をかけ、ポケットから携帯を取り出した。
そのまま運転手さんに一言声をかけ、携帯画面を何度かタップしたあと、大きな溜め息をひとつ。
「あー……航太怒ってるかなぁー。おっかないなぁー」
本気で嫌そうな顔をするから、ついつい笑いが漏れる。
「――あー、もしもしー? 航太ぁー?」
携帯越しに微かに聞こえるのは、航太君の低い声。
「……はい。ごめんなさい。すみません。みんなにも後で謝ります……はい」
航太君に怒られているっぽい稜君は、反省の言葉を口にしながらも、ちょっと不貞腐れたように唇を尖らせている。
その顔が可愛くてクスクス笑う私に、チラッと視線を向けた稜君は、ますます不貞腐れた顔をプイッと窓の方を向けてしまった。
――そして、怒られること数分。
電話を切った稜君は、俯いて大きな溜め息を吐きながら、ジトッと私を見上げた。