Do you love“me”?
「怒られた」
「うん。ちょっと聞こえてた」
「航太、マジでこえー」
「そうかなー?」
「うん。でも好きだけど」
不貞腐れながらもそんな事を言う稜君は、よっぽど航太君の事が好きなんだろう。
「本当に仲良しだよね」
「仲良しだよー。航太はそれを素直に認めないけどねっ!!」
「あははっ!」
「高一で初めて逢ったんだけどさ、あいつに“友達になろうよ!”って言ったらね、」
「うんうん」
「“えぇー、やだ”って感じ全開な顔されたんだよー。ひどくない?」
用事の済んだ携帯をポケットにゴソゴソとしまい込みながら、その頃を思い出すように楽しそうに笑う。
私と会う時、航太君は大抵おねぇーと一緒だったから、何だかその様子が想像できないんだよねー……。
「航太君って、昔そんな感じだったんだ。私、あんまり会えなかったからなぁ」
「そうなんだよ! ひどいヤツなんだよーっ! あー、でも……」
そこで一旦言葉を区切った稜君は、何故かそれまでの表情を少しだけ曇らせた。
「高三とか、プロになってすぐくらいが一番キツかったかも」
「え?」
思いがけない話に、私は少し驚いたような声を上げる。
だって私の知っている航太君は、確かにいつもニコニコはしていなかったけれど、最初から今までずっと変わらない“航太君”で……。
「昔は航太も、ファンとかに対して、それなりにニコニコしてたんだよ?」
「……」
「でも、高三の時、急に雰囲気変わってさ」
「高三?」
それって、丁度おねぇーが、アメリカに渡った頃。
「“排他的”とまではいかないけど、あんまり人と深く関わらないようにしてる感じでさ」
その時、二人の間に何があったのか。
彼女からそれを詳しく聞いた事はなかった。
“離れるしかなかった”――そう言ったおねぇーの顔があまりにも辛そうで、それ以上の事が聞けなかったんだ。