Do you love“me”?
一緒の時間
「えっと、どういう事?」
「取りあえず、一旦戻ろうか。ちょっと目立ってるし」
そう言われて、慌てて周りに目を向けると……。
「あ、あれっ!? いつの間にっっ!?」
知らぬ間に、数人のちびっこ達に取り囲まれていて。
慌てる私に、その中の一人の男の子が目をジッと見ながら、言ってきたんだ。
「ねぇー!」
「えっ!?」
「チューしないのー?」
「はいっ!?」
そのまま、何かを期待するように瞳をキラキラとさせながら膝を抱えて座り込む子供達に、言葉が出ない。
「このお姉ちゃんねー、恥ずかしがり屋さんなんだよ」
「えっ!?」
何も言えないでいる私の隣で「やっぱ、しゃがむとちょっと痛いなー」なんて言いながら、子供達の前に座り込んだ稜君は、
「だから、みんながここにいたら、お兄ちゃんチュー出来ないんだよー?」
笑いながら、そんな信じられない言葉を口にする。
「ちょっと!! 子供相手になに言ってるの!?」
なんて、慌てていたのは私だけで。
「あれー!? 川崎だぁーー!!」
「マジでー!? あーー!! ホントだー!!」
稜君の正体に気付いた子供達は、自分が落とした爆弾のことなんてコロッと忘れて大はしゃぎ。
「じゃー、このお姉さん、川崎センシュのカノジョー?」
「……あ、えっと」
純粋すぎる子供達に、ドキリとして言葉に詰まった。
こんな小さな子供にでも、バレてしまったら稜君は困るのかもしれない。
彼の置かれている立場上、こういう事にどう対処しなければいけないのかがわからなくて、しゃがんだままの彼に、チラッと視線を向ける。
だけど稜君は、それとほぼ同じタイミングで、にっこりと笑いながら言ったんだ。
「そうだよー。可愛いでしょ?」
「うわぁー! イチャイチャしてるー!!」
「ホントだー!! 川崎がイチャイチャしてるー!!」
私の心配を余所に、子供達は稜君の言葉に大はしゃぎをしている。
だけど、後ろから聞こえた看護師さんの声にゆっくりと立ち上がると、
「今度サッカー教えて?」
少し淋しそうに視線を落としながら、そう口にした。
――そっか。
私は自他共に認める健康優良児で、今まで入院なんてしたことがなかったから……。
パジャマ姿のこの子達は、きっと毎日この敷地の中で色んな事を制限されながら暮らしているんだ。