Do you love“me”?


「ポーキー、ただいまー!」

ドアを開けると、すぐに足元にポーキーが駆け寄って来る。

稜君は、そのまま彼(彼女?)を抱き上げると、私の目の高さまで持ち上げた。


「お帰り、美月ー!」

稜君によってユラユラ揺らされるポーキーは、心なしか楽しそう。


「ただいま、ポーキー」

その様子に、ちょっと笑いながらそう口にした私だったけど――稜君は何故か不満げに唇を尖らせた。


「ん? どうしたの?」

「付き合って初の“ただいま”をポーキーに取られた」

「えぇっ!?」

「あと――」

そこで言葉を止めた稜君は、ジロッと私を見上げる。


「……え?」

私、何かした?

この一瞬で!?

もちろん身に覚えなのない私は、眉間に皺を寄せて考えるけれど、やっぱり理由がわからない。

そんな私に、稜君は不貞腐れながら言ったんだ。


「“美月”って呼んだのに、スルーされた」

「あ~……、え?」

呼ばれた!?

美月って呼ばれたっ!?


「スルーどころか、気付かれてもいなかったんだ」

私の様子からそれを覚った稜君は、足元にポーキーを下ろすと、肩を落として溜め息を吐く。


「ご、ごめん!! あまりにも自然過ぎてっ……!!」

「いいよー。美月ちゃんなんか、一生美月ちゃんって呼んでやる!!」

「えぇ!?……別に、それでもいいけど」

「えぇ!!」

不満げな稜君だけど、残念ながら私は、稜君に“美月ちゃん”って呼ばれるのが嫌いじゃない。


「稜君は、“稜”って呼ばれた方がいいの?」

私のその問いかけに「う~ん」と、眉間に皺を寄せながら、一人唸る。


「……“稜君”も悪くないかも。“稜”って呼ばれると、ちょっとねーちゃん思い出すし」

「何それ」

「ん~……。このままでいっか!」

「うん!」

何だか幸せで、心がぽかぽかして。

クスクスと笑い合った、私達。


「じゃー改めまして。お帰り、美月ちゃん」

「うん。ただいま稜君」

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