Do you love“me”?
「美月ちゃん。話、してもいい?」
強く抱きしめていた腕の力を緩め、ゆっくり私をそこから解放した稜君は、そっと私の顔を覗き込む。
「……うん」
取り乱した自分を反省しながら、静かに、長い息を吐き出した。
だけど、鼻をすすりながら出した私の声は、自分でも驚くほどに小さなものだった。
俯く私の手を引いて歩き出した稜君は、少し先にある自販機で、温かいココアを買ってくれた。
それを私に渡して、近くのベンチに腰掛ける。
稜君は自分の掌を暫く眺めて――そして、ゆっくりと、自分の心の中の想いを口にしたんだ。
「まさか、こんなに好きになるなんて思ってなかったんだ」
「……え?」
驚いて視線を向けると、稜君はちょっと困ったような顔で笑っていた。
「美月ちゃんに逢った時、ものすごく確信めいた何かがあったのに。でも、あの時の俺は、移籍する事ばっかり考えてて……」
そこで一旦言葉を切った稜君は、“ごめんね”とポツリと口にした後、
「だから、この想いは消えるんだって、そう思おうとしてたんだ」
小さく、そう呟いた。
「……っ」
――想いが、消える?
その言葉を聞いた瞬間、私の胸に、何かが突き刺ったような痛みが走り、稜君のシャツの胸のあたりを思わず両手で掴んだ。
「嫌だ! そんなの嫌だよ……っ」
もしかしたら、稜君とのこの関係はなかったのかもしれない。
そう思うだけで、私の胸は張り裂けそうなほどに痛む。
「……うん」
見上げる私の瞳を見つめ、頬にそっと触れた稜君は、小さく頷いて。
「消せるはずなんかないって、ホントはわかってた」
もう一度、私を温かい腕の中に抱き寄せたんだ。
「だけど、自分にそう言い聞かせないと動き出せそうになかった」
「……」
「情けないね」
稜君は私の体をギュッと抱きしめると、自嘲的に笑った。