Do you love“me”?
「だけど、移籍の話も進まないまま、こうして美月ちゃんと一緒にいられるようになって」
「……」
「“日本で出来るところまで頑張ろう”って、そう思った矢先に、移籍先が決まって。素直に喜べなかった」
頬を寄せた胸元から響く稜君の声が、いつもよりも少しだけ低く感じる。
「あんなに行きたいって思ってたのになぁ……」
溜め息混じりに呟いた稜君は、天を仰ぎ、空に向かってゆっくりと息を吐き出した。
「稜君……?」
「なーに?」
「どれくらい?」
「え?」
「どれくらい、行く予定なの?」
「契約は……取りあえず、一年」
「“取りあえず”?」
「うん」
どことなく曖昧な返事をした彼は、すっかり暗くなった空から、戸惑う私に視線を戻す。
「上手くいけば延長されたり、そのまま移籍になったりするかもしれない」
「そっか」
温かい腕に包まれながら、トクトクと音を立てる彼の胸に顔を埋めて……。
何とか頭を整理して、やっと少しだけ落ち着きを取り戻した。
それから、一番最初に聞きたいって――聞かないといけないって思ったことを静かに口にする。
「別れなくても……いい?」
まるで様子を窺うように、オズオズとその顔を見上げた私に、稜君は困ったように笑いながら言ったんだ。
「出来ればそうしてもらいたいんだけど」
「よかった……」
だって、こんなに好きなのに、今更稜君を忘れる方法なんてわからないんだもん。