Do you love“me”?
「……」
電話を切った後、考え込んだ私は、アドレス帳から彼氏の相澤 秀(あいざわ しゅう)の名前を呼び出して、通話ボタンを押してみた。
だけど、私の耳に届くのは、
“おかけになった電話は、電波の届かない所におられるか――……”
昨日からもう何度聞いたか分らない、機械的な素っ気ない女の人の声。
「はぁ……」
彼の携帯は、昨日の夜から通じない。
理系大学院生の彼は、実験室で日々過ごしていて、携帯の電波が邪魔になったりする事もあるらしく、電源を切っている事が多い。
でも、こんな時くらい通じて欲しい。
二人きりではないにせよ、男の人と食事に行く羽目になった事を、一応言っておこうと思ったけど……。
これじゃーしょうがない。
溜め息を吐いた私は、携帯を鞄にしまうと、ノロノロと着てきた服に袖を通した。
「あ……。そういえば」
電話を切った後、最上さんからメッセージが届いいていた事を思い出し、もう一度カバンからそれを取り出した。
地図が添付されたそれは、どうやら“お食事”をする場所を示したメールらしいんだけど。
「えぇー……」
見た瞬間、何となくゲンナリ。
だってそこは、有名な五つ星のホテルで……。
確かに、そこにレストランも入っているけど、やっぱりホテルに行くのは気が引ける。
そもそも、そういう所って、服装にも気を遣うし。
「この服でいいのかなぁ?」
イメージを大切にするアパレルの会社だけに、うちの会社は通勤の時も服装に気を遣わせる。
だから、今日の服だって自分の会社のブランドの服ではあるけど。
チラリと向けた視線の先には、社員にだけ先行で社割販売される、新作の洋服達。
「はぁ……。余計な出費だぁー」
結局私は、溜め息交じりにその中のちょっとだけ気になっていた、綺麗な素材のワンピースを一枚手に取った。