Do you love“me”?



「佐々木さん? どうかしたの?」

「あ! いえ!」

「そう? 何だか、落ち着きがないから。……お客様に、失礼のないようにね」

「はい」

刺すような視線を私に向け、踵を返すお局様の背中に頭を下げて溜め息を零す。

腕時計に目をやり、痛む胸にそっと手を当てた。


三十分後、稜君は飛行機に乗って、遠い所に行ってしまう。

さっきから、ポケットにこっそり入っている携帯電話と、時計がどうしても気になってしまう。

本当はちゃんとお見送りに行けたらって思うけど、行っても、マスコミとファンに囲まれる稜君を遠目に見る事しか出来ないもんね。


「はぁ……」

周りに聞こえないように、もう一度溜め息を吐く。

だけど次の瞬間、ポケットの中の携帯が小さく震えてドキリとした。


「ストックの確認してきます!」

周りのスタッフに慌てて声をかけて、私は小走りで倉庫に向かう。


「もしもし!!」

レジの横を通り抜け、スタッフ専用のドアをくぐり、廊下を進んだ先にある倉庫で、ちょっと息を切らせながら通話を押す。


「美月ちゃん?」

耳元で響く優しい声に、胸が締め付けられた。


「稜君……?」

「うん! 電話繋がらないだろうと思いつつも、ダメ元でかけてみた!」

出国前に電話をしてとか、電話するとか、そんな約束を交わしたわけじゃない。


――でも。


「電話くれるかもと思って、こっそりポッケに携帯を入れてたんだ」

「そっか! 以心伝心だ」

私の言葉に、クスクスと笑った稜君。

いつも通りの彼に、少しホッとした。


「まだ飛行機には乗らないの?」

腕に巻かれた時計に視線を落とせば、もう出発の十分前だ。


「あー……今から乗るとこ。その前に、美月ちゃんの声が聞きたくなっちゃった」

「そっか。ありがとう。嬉しい!」

「いやいや、こちらこそ! これで向こうに着くまではもちそうだよ」

「うん」

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