Do you love“me”?
もう打つ手はないのかと思っていた。
だって、おねぇーは日本にいないし、彼氏はあてにならない。
女友達を呼んだって状況がよくなるとも思えなくて。
「あー、でね!」
だけど、おねぇーのその声に顔を上げた。
「うん?」
「航太が、もしも美月から最上さん関係で連絡きたら、川崎君に電話するように伝えてって!」
「え? “川崎君”って、稜君?」
思いがけない人物の名前。
それにただ驚くばかりの私に、おねぇーは話しを続ける。
「うん。美月、川崎君の番号知ってるでしょ?」
「知ってるけど。何で、稜君?」
「私もわかんないけど、航太がそうしろって言ってた」
声の様子からすると、電話の向こう側のおねぇーも、私と同じように事情がわからなくて顰めっ面をしているんだろう。
「だから、取り合えず電話してみて?」
「わ……かった」
歯切れの悪い返事をして、電話を切る。
そしてそのまま、アドレス帳のカ行から、稜君の名前を探し出す。
「んー……」
だけど、どうなの?
いきなりこんな事で電話って。
稜君だって、こんな電話もらっても困るよね?
一瞬考え込んだけど、もう背に腹は代えられない。
「ふぅ……」
一度大きく深呼吸をしてから、通話ボタンをタップする指に、力を込めた。
「……」
でも、呼び出し音が続くだけで、一向に稜君には繋がらない。
――ダメか。
あきらめかけた瞬間……
「もしもし? 美月さん?」
あの日聞いたものよりも、ほんの少し低く聞こえる稜君の声が、耳元で聞こえたんだ。