Do you love“me”?
「どーも。コンバンハ」
そんな言葉とともに、私の腕を掴んで、自分の方に引き寄せたその手の温もりを、私は知っている。
でもそれは、こんな所にいるはずがない人の温もりで……。
「俺に何か、お話があるそうで」
その、いつもより低い声も。
違う。
いるはずがない。
でも……間違えるはずもない。
驚いて振り向いた視線の先にいたのは、
「稜、君?」
部屋着のまま、パーカーのフードを頭からスッポリとかぶった、稜君だった。
ちょっと俯き加減だった視線を少し上げて、私と目が合った瞬間、ふわりと笑う。
「――……っ」
震える手で口を覆った私の頭を“ポンポン”と、その変わらない温かい手で撫でると、もう一度視線を杉本さんに戻した。
「俺に話があるんでしょ? 聞きますけど」
「……」
「あぁ、その前に」
私と同様、予想外の展開に言葉を失う杉本さんの手は、私の腕を掴んだまま。
「人の彼女に、気安く触んないでくれますか?」
それを掴み上げ、私の手を離した瞬間、ポイッと投げ捨てるように放り出す。
そして、溜め息とも取れる長い息を吐き出したあと、
「話、しないんですか?」
低い声でそう言って、ゾクリとするほど鋭い視線を杉本さんに向けたんだ。
それに、杉本さんが息を呑むのがわかった。
「俺があんたよりいい男かどうか、確かめるんじゃないの?」
稜君は、少し首を傾げながら、自分よりも背の低い杉本さんの顔を覗き込む。
「いや……別に、あれは……」
さっきまでの威勢はどこへ行ったのか、杉本さんの口から零れ出る言葉は、とても小さく、情けないもの。