Do you love“me”?
12時間
杉本さんが角を曲がって、その背中が見えなくなった瞬間、腰が抜けたように、私はその場にペタンと座り込んだ。
「わわわっ!! 美月ちゃん!? だ、大丈夫!?」
慌てて私の前にしゃがみ込んだ――“多分”稜君。
だって、未だに目の前に彼がいる事が、どうしても信じられない。
「……稜君?」
「うん?」
「稜君、だよね?」
「うん。そうだよ?」
目を見開く私の目の前で、フワッと笑ったその人は、正真正銘“稜君”で……。
「稜君っ!!」
「――わあっ!!」
勢いよく飛び付いて、その首に腕を回してギュッと抱きついた。
あぁ、稜君だ。
その香りも、その温もりも。
全てが、稜君を感じさせるもの。
「稜君……」
私の勢いに尻もちをついた稜君は、私をその長い腕で包み込み、そのままギューッと抱きしめる。
「ただいま」
「……」
「美月ちゃん?」
返事をしない――というか出来ない私を覗き込む稜君の顔が至近距離にあって、さっきから頭の中でグルグル回っている言葉を、やっとの思いで口にする。
「どうして」
「へ?」
「どうして、いるの?」
未だに混乱して泣きそうな声を上げる私を、優しい眼差しで見つめた稜君は、私の顔を覗き込みながら何も変わらない笑顔をふわりと浮かべた。
「約束したでしょ? “美月ちゃんが淋しくて耐えられない時は、一番早い方法で帰ってくる”って」
どうしてこの人は。
「――……っ」
彼の言葉に、耐えていた涙が、ポロポロと頬を伝う。