Do you love“me”?
「今から、迎えに行きます。場所、教えて下さい」
「へっ!?」
次に彼の口をついて出た言葉に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
“迎えに行きます”って、何で!?
だけど、パニックを起こす私とは対照的に、稜君は至って冷静で。
「場所、教えて下さい」
もう一度、静かに声をかける稜君の後ろから聞こえるのは、さっきまでは聞こえなかった車の騒音。
きっと、建物の外に出たんだろう。
この前聞いた声とは全く違うその声に、少し戸惑いながらホテルの名前と場所を告げると、
「十五分……いや、十分で行きます。今日、美月さんアクセサリー付けてましたか?」
突然、そんな事を言い出した。
アクセサリー?
「はい。指輪とネックレスと、ピアスを」
「じゃー、ネックレス外して最上さんの所に戻って」
「え?」
「“ホテルのどこかでネックレスを無くした”とでも言って、時間稼ぎしてて下さい」
時間稼ぎ?
「もしも何か言われたら、“彼氏に貰った物で”とか、“外さない約束してるから、浮気だと思われる”とか言って、誤魔化して下さいね」
「わ、わかりました」
もう何だかよくわからないけど、とにかく頷きながら返事をした私に、稜君は「絶対部屋には行かないで。すぐ行くんで、待ってて下さい」と告げると、返事も待たずに電話を切った。
――“待ってて下さいね”。
そう言った稜君の声が、耳から離れない。
それに、さっきまでドクドクと嫌な音を立ていた心臓は、いつの間にかゆっくりと落ち着いた鼓動を刻んでいた。
「ふー……」
少しだけクリアになった頭を振って、小さく息を吐き出し、首元から細いシルバーのネックレスを外した私は、
「大丈夫」
自分に言い聞かせるようにそう呟いて、ゆっくりとパウダールームを後にした。