Do you love“me”?
「普通の時も、試合中とかも……。キツくなって空を見上げると、美月ちゃんの香りがする」
「うん……」
「それって、すごく俺の力になるんだよ?」
「……っ」
彼の言葉に、心が震えた。
“辛くなったら、空……見て”
そう言った稜君の言葉に支えられているのは、私だけじゃなかったんだね。
「稜君も、空見てるの?」
少し滲む視界で捕らえた、稜君の姿。
「もちろん!」
目の前で笑う彼の顔を見て、私の心に温かくて、優しい何かが広がる。
――だけど、次の瞬間。
「……最近は、いつもだよ」
俯きながら小さく笑う稜君の姿に、心が微かにざわついた。
「稜君?」
「んー?」
「何かあった?」
「……」
私の言葉にゆっくりと顔を上げた稜君は、小さく笑って、また私の髪をそっと撫でる。
「ねぇ、美月ちゃん?」
突然後ろから回された腕と、引き寄せられた先の温かい胸。
「美月……」
耳元に寄せられた彼の唇から発せられるその名前は、呼ばれ慣れた自分の名前のはずなのに、胸がギューっとしめつけられて……。
「――ひとつになれればいのに」
水面を僅かに揺らすように落とされた彼の言葉に、何故か涙が零れた。
きっと、何かあったんだね。
ねぇ、稜君。
私はそれを聞いてもいいのかな?
「ごめん」
小さく声を震わせて、私の肩を涙で濡らすその理由。
あなたの口からそれを聞きたいと思ってしまう私は、思いやりに欠ける人間なのだろうか。