Do you love“me”?
「稜君」
俯いたままの彼の柔かい髪に、そっと指を通す。
「……ん」
「ひとつになったら、私はこうやって、稜君に触れられなくなっちゃう。稜君の声で、“美月”って呼んでもらえなくなっちゃう」
「……うん」
「それにね――」
そこで言葉を止めた私は、ゆっくり振り向いて、静かに顔を上げた稜君の首にそっと腕を回した。
「稜君の温もりを感じられなくなっちゃうよ……」
小さく揺れた瞳に、また胸がギュッとなって、その唇に自分の唇をそっと押しあてた。
そのままゆっくりと唇を離して、至近距離で見つめ合う。
どうしたら彼を助けてあげられる?
どうしたら……。
“稜君”
そう呼びかけようとした瞬間、後頭部に回された稜君の大きな手の平。
「ん……っ」
そのまま抱きすくめられて、いつもよりも荒々しく唇を塞がれる。
「美月」
少し苦しそうに掠れたあなたの声。
荒々しいキスとは裏腹な、優しい温もりを感じながら思ったんだ。
「ね……稜君。やっぱりひとつじゃない方がいいよ……」
私は稜君に与えられる甘い刺激に、余裕なく吐息交じりにそう言って笑った。
その言葉を聞いて、稜君は濡れた瞳を私に向ける。
「二人だから、こんなに気持ちいいんだよ?」
「……っ」
「二人だから……こんなに幸せになれる」
動きを止めて、弾んだ呼吸のまま私を見下ろす彼の瞳が、また小さく揺れた。
「そうでしょう?」
そう問いかけた瞬間、私の胸元にポツリと落ちた、一粒の雫。
「うん、そうだよね」
それが、俯いた稜君の瞳から零れた物なのか、それとも、汗ばむキレイな体を伝い落ちた物なのか。
「心臓キツイ」
「え?」
「好きすぎて、痛いや……」
ゆっくりと上体を起こした稜君は、そっと私の手を取って、自分の胸に押し当てた。
荒くなった呼吸で上下するその胸からは、いつもよりも速い、稜君の鼓動を感じる。
「苦しくなる」
「稜……君?」
その言葉に、一瞬不安を覚えた私はゴクリと息を呑んだ。
でも、私の向けられたのは――。
「だけど、どうしても放したくない」
稜君の真っ直ぐな眼差しと、そんな強い言葉だった。
稜君。
あなたが抱えている、大きくて、重たい何か。
私が持つのを手伝ったら、少しだけかもしれないけれど、きっと稜君の心も軽くなるんじゃないかって――私はそう思うんだ。