Do you love“me”?


久し振りに稜君の温もりをいっぱいに感じた私は、心地のいい怠惰感に身を委ね、ベッドの上で瞳を閉じて微睡《まどろ》んでいた。

きっと稜君は、私が寝ていると思ったのだろう。


「美月」

優しい声が頭上から落とされて、温かい手がそっと私の頭を撫でる。

そして、頬に落とされた優しいキス。


頬に触れるフワフワの髪の毛がくすぐったくて“くすぐったいよー”と、閉じていた瞳を開こうとした。

だけど、次に聞こえた彼の声に、私はそうする事が出来なかった。


「……ごめんね」

稜君の口から紡がれた、その言葉。

言葉もそうだけれど、感情を無理やり押し殺すような、僅かに震えるその声に、胸が大きく軋む。


「どうすればいいんだよ……!」

少し苛立ちを含んだ声色でそう吐き捨てられて、私の胸はますます痛んだ。

その後聞こえたのは、まるで自分を落ち着かせるように吐き出された大きな溜め息。


そのままその細い指で私の髪をそっと梳いた後、ベッドのスプリングが小さく軋み、稜君が静かに立ち上がって寝室を出て行く気配がした。


――“ごめんね”。

彼の声が、頭の中に何度も蘇る。


何の謝罪?

稜君は今、何を抱えているのだろう?

これから一体なにが起こるの?

ベッドの上に取り残された私の頭に浮かぶのは、自分一人では到底答えが出そうにもない、たくさんの疑問。

湧き上がる不安な気持ちに、手が小さく震える。


「はぁー……」

私は一度深呼吸をして、そっと目を開けた。

視界に入ったのは、薄く開いた扉の隙間から洩れる、リビングの灯り。

そして、微かに聞こえる声に息を呑んだ。

それは英語で喋る、いつもより低い稜君の声。


「……」

あぁ。

商業英語なんて、中途半端に勉強するんじゃなかった。

断片的に聞こえてしまった単語から、稜君のこれからを、こんな形で知ってしまうなんて――。

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