Do you love“me”?

試合中は当然の事ながら、サッカーに集中してるから、こっちを向く事なんてそうそうないけれど……。

それでも、ピッチで仲間に檄《げき》を飛ばす稜君は、いつもの柔かい雰囲気とは全然違ってすごく新鮮。

とにかく、ものすっごくカッコイイ。

どちらかというと、私を“美月”と呼ぶ時の稜君に近いかも……。

そんな事を思ってしまって、一人赤面した顔を隠すように両手で自分の頬を包み込む。


もしかして私、欲求不満?

いやいや、まさか。

あれだけあんな事をしてるのに、欲求不満なワケがないでしょ――って、ホント何を考えてるの!!

今更ながら、自分の重症っぷりにまた顔が熱くなる。


「あっ、川崎君のコーナーだよ!!」

そう言って興奮した様子で私に向き直ったおねぇーは、案の定怪訝そうに眉を寄せた。


「……美月?」

「な、なんだい?」

「顔赤いけど」

「……えへっ」

「川崎君、蹴るけど」

「ホントだ!! 頑張れー!!」

刺さるような視線から逃れようと、半分誤魔化しの為に私が大声を上げたその時、ピッチの上の稜君がゆっくりと振り返った。

目が合うと、彼はまるで私の反応を楽しむかのようにニッコリと笑って、そのまま空に向かって“フーッ”と息を吐き出す。

そして、まるで“見ててよ?”と言わんばかりに、前を見据えた。


「……」

その真剣な目が、やっぱり大好き。

ボールから少し離れた場所で腰に手を当て、周りの仲間を見回すと、次の瞬間――。

大きな音と共に彼の脚から蹴り出されたボールが、キレイな曲線を描きながらゴールネットを揺らした。

歓声は、怒号のように更に大きくなって……。

稜君はそのど真ん中で、唇に当てた両手を私に向かって真っ直ぐ伸ばし、いつもの人懐こい笑顔を浮かべた。


こ、これは……俗に言う“投げキッス”ってやつですか!?


「もー……」

でも、そんな事をしても可愛くて、どうしようもなく似合ってしまう稜君。

思わず笑ってしまった私の顔を見て、満足そうにその頬を緩めた稜君は、仲間にもみくちゃにされながら、また試合に戻って行く。

そんな彼の背中を眺めながら、やっぱり思ってしまう。


――いつもこんな風に、傍に居られたら。

きっとこの頃から、私はもう既に考え始めていたのだと思う。

これからの、自分の事を……。


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