Do you love“me”?
お風呂から出て、しばらくリビングで楽しく話しをしていた私達だったけれど、零時を過ぎた頃、私の間の抜けたあくびをきっかけに、そろそろ寝ようという話になってしまった。
「じゃー、美月ちゃんと美青ちゃんはここで寝てねー!」
いつもはあまり使われていない客室に、航太君と稜君が布団を二枚敷いてくれる。
「ありがとう! ……ねぇ?」
「なーに?」
「稜君と航太君は、二人でベッドに寝るの?」
ちょっとだけ湧いた、そんな疑問。
それも怖いもの見たさで、見てみたい気もする。
だけど、そんな私にかけられたのは、
「本気で勘弁して下さい……。俺はリビングに布団敷いて寝ます」
航太君の、残念な言葉だった。
「えぇ、そうなんだぁー……」
ちょっと残念。
だって、この二人が一緒のベッドで寝ているところなんて、マニアには――いや、マニアじゃなくたって涎物のはず。
……っていっても、絶対誰にも見せないけど。
「俺は“いいよっ!”て言ったのに、航太に却下されたんだよー」
「当たり前だろ……。何でお前と寝ないといけないんだよ。ほら、もう行くぞ」
ゲンナリ顔の航太君は、そのままおねぇーに視線を移すと、頭のおだんごをポンポンと叩いて、
「おやすみ」
絶対に他人には向けることのない、優しい笑顔を浮かべる。
それはいつもの、おねぇーにしか向けられる事のない笑顔。
だけど、昔はあんなにも羨ましかったその笑顔も、今はそんなに羨ましいとは思わない。
その理由は、きっと――。
「美月ちゃんもおやすみっ! ゆっくり休んでねー」
私を見つめる、稜君のこの瞳を知ってしまったから。
「うん! おやすみー!」
私にだけ向けられる、稜君のその柔かい眼差し。
私の髪をそっと撫でる、温かい手の平。
私は十分過ぎるほど、幸せなのだと思う……。