Do you love“me”?


お風呂から出て、しばらくリビングで楽しく話しをしていた私達だったけれど、零時を過ぎた頃、私の間の抜けたあくびをきっかけに、そろそろ寝ようという話になってしまった。


「じゃー、美月ちゃんと美青ちゃんはここで寝てねー!」

いつもはあまり使われていない客室に、航太君と稜君が布団を二枚敷いてくれる。


「ありがとう! ……ねぇ?」

「なーに?」

「稜君と航太君は、二人でベッドに寝るの?」

ちょっとだけ湧いた、そんな疑問。

それも怖いもの見たさで、見てみたい気もする。


だけど、そんな私にかけられたのは、

「本気で勘弁して下さい……。俺はリビングに布団敷いて寝ます」

航太君の、残念な言葉だった。


「えぇ、そうなんだぁー……」

ちょっと残念。

だって、この二人が一緒のベッドで寝ているところなんて、マニアには――いや、マニアじゃなくたって涎物のはず。

……っていっても、絶対誰にも見せないけど。


「俺は“いいよっ!”て言ったのに、航太に却下されたんだよー」

「当たり前だろ……。何でお前と寝ないといけないんだよ。ほら、もう行くぞ」

ゲンナリ顔の航太君は、そのままおねぇーに視線を移すと、頭のおだんごをポンポンと叩いて、

「おやすみ」

絶対に他人には向けることのない、優しい笑顔を浮かべる。

それはいつもの、おねぇーにしか向けられる事のない笑顔。


だけど、昔はあんなにも羨ましかったその笑顔も、今はそんなに羨ましいとは思わない。

その理由は、きっと――。


「美月ちゃんもおやすみっ! ゆっくり休んでねー」

私を見つめる、稜君のこの瞳を知ってしまったから。


「うん! おやすみー!」

私にだけ向けられる、稜君のその柔かい眼差し。

私の髪をそっと撫でる、温かい手の平。

私は十分過ぎるほど、幸せなのだと思う……。


< 302 / 397 >

この作品をシェア

pagetop