Do you love“me”?
この部屋を、解約?
「……っ」
思いもよらないその言葉に、心臓がドクドクと大きく早鐘を打つ。
中まで聞こえてしまいそうな程に、大きなその音。
私は思わず、胸の辺りをグッと握りしめた。
――聞いちゃダメだ。
立ち聞きなんて、しちゃダメだよ。
稜君からちゃんと聞くまでは……。
だけど、頭では解っているのに、身体が動かない。
そんな私に追い討ちをかけるように聞こえたのは、いつもよりもほんの少し低い、稜君の声だった。
「あぁ……。三月には」
三月。
もうそんなに具体的に決まっているの?
「……そっか。美月さんには?」
「まだ、言ってない。言わないといけないのは、わかってんだよ。でも、たまにしか逢えない美月ちゃんが、ニコニコしてるのを見ると――」
そこで詰まったように、稜君は言葉を止めてしまった。
さっきまで布団にくるまっていたせいなのか、この廊下は少し肌寒く感じる。
でも、この手の震えは、そういうのじゃなくて……。
「これからの事は話したのか?」
「……っ」
核心に迫る航太君の言葉に、私はギュッと指を握った。
「それも、まだ」
「……そっか」
そう言ったきり、二人はしばらく沈黙して、少しの後、それを破ったのは稜君だった。
「なぁー、航太」
「んー?」
「お前、美青ちゃんを向こうに連れて行く時、怖くなかったの?」
稜君の言葉に、私は思わず息を呑む。
「そりゃこえーだろ。俺の人生に、美青を思いっ切り巻き込むんだから」
「じゃー、何で連れて行った?」
稜君の問いかけのあと、また少しの沈黙が流れて……。
「俺と美青は、もう離れるわけにはいかないと思ったから。あー……いや、違うか」
そう言った航太君は、少し笑いながら柔らかく言葉を紡ぐ。
「俺がもう、限界だったからか」