Do you love“me”?
「じゃーまたね」
「うん。ありがとね!」
出国ゲートで手を振る私に、少し心配そうな視線を送ったあと、笑顔を浮かべて手を振ったおねぇーは、航太君と一緒に、その先の人混みに消えていった。
「帰っちゃったねー」
「ねー」
さっきまで、あんなに騒々しかったのに。
やっぱりちょっと、淋しく感じる。
「さて。この後どうする?」
そう言って、珍しくキャップをかぶっている稜君が、私の手を握った。
その顔を覗き込むように見上げると、稜君は「ん?」と首を傾げてみせる。
「やっぱり、キャップ見慣れないね」
「そうー? ちょっと航太の真似してみたんだけどなぁ」
クスクス笑う私に、稜君はそのツバをちょっとだけ上げて、いたずらっ子のように笑った。
「で、行きたい所はある?」
「んとね、いつものトコっ!」
「海浜公園?」
「うん!」
「オッケー! じゃー、行きますか!」
本当は展望デッキもいいかとも思ったんだけど……。
あそこは稜君を見送る場所だから。
そのままバイクで公園に向かい、いつものように、飛び立つ飛行機を見上げる。
「航太と美青ちゃんの飛行機、そろそろ飛び立つ頃かな?」
「そうかも! どれかなぁー?」
「向こうまで、十三時間くらいだっけ?」
「うん」
「そっかぁー……」
その言葉を口にした後、二人とも言葉に詰まってしまったのは、明日の別れをどちらともなく想像してしまったからだと思う。
それに、いつあの話をされるのかを、私はずっと気にしていた。
空を見上げたままの二人の間に流れた、少しの沈黙。
「美月ちゃん」
それを破ったのは、私を呼んだ稜君の声だった。
「明日、帰る前に話したい事あるんだ」
「明日?」
「うん」
「今じゃダメ?」
「……」
「出来れば、今聞きたい」
だって、いつまでもドキドキしているのはやっぱり辛い。
「……うん」
まるで独り言のような返事をポツリと口にして、一度長く息を吐き出した稜君は、空を見上げたままそっと私の手を握りしめた。
そして、視線をゆっくり私に落とす。
「来シーズンの事なんだけど」
「うん」
「もう一年、トレードで向こうに残る事になったんだ」
「……そっか!」
笑顔を浮かべながらそう口にした私に、稜君は驚いたように瞳を見開いた。