Do you love“me”?
「どうしたの?」
「いや。どんな反応されるか、色々考えてたんだけど……。そんなに嬉しそうに笑ってくれるとは思わなくて」
「だって、また向こうでプレー出来るんでしょ?」
「うん」
「それって嬉しい事でしょ?」
「……そうだね」
「だったら私も嬉しいもん!」
そんな私を見て、一瞬下を向いた稜君は、もう一度息を吐き出す。
「ありがとう」
「え?」
「本当は泣かれたらどうしようって、ちょっと心配だった」
「泣かないよー」
「……そっか」
だって、私が泣いたら稜君が胸を痛めることになる。
昨日は突然のことに頭が混乱して、取り乱してあんなに泣いてしまったけれど、稜君がまた向こうでサッカーが出来るということは、本当に嬉しいと思っている。
だから、もう泣きたくない。
好きな人の頑張りを邪魔するような彼女にはなりたくない。
「それで……」
そこでまた言葉を詰まらせた稜君は、きっと昨日の話を切り出そうとしているのだろう。
私は小さく息を呑んで、動揺を悟られないように手をギュッと握りしめる。
「俺なりにたくさん考えたんだけど……。やっぱりもう一年、一人で向こうで頑張ろうと思う」
「うん」
「――ごめん」
私の目を真っ直ぐ見据えて、ハッキリとした口調でそう告げた。
「どうして謝るの?」
「また遠距離で、美月ちゃんに辛い思いさせちゃうなって思って」
稜君は優しいね。
きっと、一人でたくさん悩んだんでしょう?
どうしたら私を悲しませないで済むのかとか、どんな言葉が私を一番傷付けないだろうとか。
「もー……。何回も言ってるでしょ! 私は稜君が大好きなんだよ?」
「うん」
「稜君のサッカーも大好きっ!! いつも応援してる」
真っ直ぐ私を見つめる稜君の指が、少しだけ戸惑いがちに頬に伸ばされる。
「ありがとう」
その言葉に、私は笑顔を返した。
だけど目の前の稜君は、まだ困ったような顔をしていて……。