Do you love“me”?
稜君がイギリスに戻った数日後、正式に公表された契約の延長。
記者会見を開いた稜君は、いつもよりも少し、言葉数が少なかった。
「やはり最終的な目標は、完全移籍をして、MFとしてきちんとした基盤を築く事です」
正面を見据えて口にしたその言葉の通り、イギリスに戻ってからの稜君は本当に凄かった。
試合に出れば、ほぼ毎試合アシストか得点を決め、観客からは“稜コール”が湧き起こる。
イギリスのスポーツニュースでも、日本の番組でも、今まで以上に取り上げられるようになった。
稜君の活躍を目の当たりにしたり、耳にしたりするのは本当に嬉しかった。
だけど私はそれ以上に、心配だった。
メールを送れば返事はほとんど返ってくるし、電話をすれば今までと同じように、繋がる時は繋がる。
だけど、繋がった電話の先の稜君は、すごく疲れているみたいで……。
声からもそれは分かったし、電話の途中で寝てしまう事も多かった。
それに、テレビ越しに観る稜君は、また少し痩せたような気がする。
そのせいか、いつも胸騒ぎにも似た何かが、私の中にあって。
私はただ、何も起きないように、それだけを毎日願っていた。
それから数週間経った頃。
稜君が航太君に話していた通り、ケガをしていたチームメイトが復帰した。
――それからだった。
私の願いを嘲笑うかのように、何かが崩れ出したのだ。