Do you love“me”?


その日も私は、自分の胸元をギュッと握りしめながら、テレビの前で稜君の試合を観戦していた。

最近、稜君の試合を観るのは正直苦しい。


バートが復帰してから、やっぱり稜君の出場機会は以前よりも減って……。

それでも、最初の頃は上手くいっていた。

きちんと仕事をこなす稜君は、十分に戦えていたのに、いつからか、稜君のプレーと周りが噛み合わなくなってきたのだ。


原因は、素人目に見ても分かるくらい、稜君の調子が崩れ始めた事。

まるで何かを焦っているかのようなそのプレーに、私はあの夜、稜君が航太君に話していた事を思い出していた。


「“バートが復帰したらどうなるんだ?”って……。“来期は契約さえないんじゃないか”って、正直怖くなった」


その言葉通り、何かに追われるように、稜君がどんどん追い詰められているような気がしていた。


試合を重ねる度に、空を見上げる回数が増える稜君。

その姿を見る度に、私の胸はギリギリと締めつけられるように痛む。


“辛くなったら……空見て”

“10,000キロ先の空の下に、美月ちゃんがいる。そんな風に思うと、全然違うんだよ?”


私が追い詰められた時、そう言って優しい声で語りかけてくれた稜君。

きっと空を見上げる度に、稜君は同じ香りに包まれながら、私を思い出している。


こんなに好きなのに、私は……。

彼の為に、一体何が出来ているのだろう?

何も出来ない自分が悔しくて、ギュッと手を握り、唇を噛みしめた。


「稜君、頑張って……っ」

十分頑張っている彼に、こんな事しか言えない自分が、ただただ悔しい。

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