Do you love“me”?
「え? これ、稜君の……?」
「そうですよー」
ホテルのエントランスを出た、本当に目の前。
そこに停めてあったのは、大型のバイクだった。
それが何ccの物かとか、バイクに詳しくない私にはわからないけど、とにかく大きい。
何となく、フワフワした彼のイメージとのギャップに驚く私に「はい、どうぞ!」とヘルメットを渡してきた彼は、もう一つのメットを自分でスポッとかぶった。
「……」
これは……いいんだろうか?
だって、普通メットが二つあったら“彼女の?”と思うのがごく自然で。
うーん……。
メットを抱えたまま、しばし悩んでいると、
「え?」
パッと、手から奪われたヘルメット。
「ハイ、かぶる! そして乗るっ!」
もちろん奪ったのは稜君で、それをそのまま、私の頭にかぶせる。
「……」
案の定、そのメットからは微かに甘い香りがして、すごく申し訳ない気持ちになった。
「早く乗って下さい!」
だけど、当の稜君はと言うと、メットのせいでよく見えないけど――多分楽しそうに私を急かしつけてくるから。
勢いに負けて、乗ってしまったバイクの後ろ。
「ちゃんとつかまってて下さいね!」
「……はい」
振り向きながらそう言われて、ちょっとだけその腰に手を回した私に、稜君は、“もっとちゃんと掴まないと、落ちますよー?”と、人の腕を掴んで。
それを自分の腰に巻きつけると、また楽しそうに笑う。
「……」
なんかもう半分自棄になっていた。
彼の腰に回した腕に、ギュッと力を込めてしがみ付いたのを確認すると、
「よし! 出発!」
稜君は元気よく告げ、バイクを発進させた。