Do you love“me”?
「俺が頼む事じゃないですけど」と笑う航太君はやっぱり大人で、自分が年上だという事を忘れてしまいそうになる。
おねぇーと航太君は、同じ空気を醸し出す。
その後、私の少し吹っ切れた気持ちに気付いたのか、航太君は約束通り、おねぇーに電話を替わった。
「少し落ち着いた?」
「うん。ありがとう」
「いえいえ。って、私は何もしてないけど」
そう言って笑うおねぇーの優しい声が、心地よく胸に沁みわたる。
「私ね、イギリスに行こうと思ってるの」
それが、ここしばらくの間に私が考えていた事。
「……そっか」
「でも、何から手を付けていいのか分からなくて。それに――」
「ん?」
「稜君は迷惑だって思わないかなって不安になっちゃって」
誰にも曝す事の出来なかった胸の内の不安を吐き出した私に、いつもよりも、もっともっと柔かいおねぇーの声が返ってくる。
「美月はどう思うの? 川崎君は、そんな風に思う人?」
稜君は……。
ううん。
「違う」
「だったら、もう答えは出てるよね」
ホントだね。
もう決まっていたんだ。
自信のない私は、ただ誰かの後押しが欲しかっただけ。
けれどもそれは、結局は自分で決めないといけない事で……。
口下手なのに、あんなにたくさん話しをしてくれた航太君と、いつも答えを導き出してくれるおねぇー。
もう十分すぎるほど助けてもらったんだから、次は自分が頑張らないと。
「ありがとう」
「えー? だから、何もしてないって!」
稜君。
私、決めたよ。
だからもう少しだけ、待っていてね。