Do you love“me”?



「こうやって見ると、結構荷物多いなぁー」

そう言いながら、隣に立つ稜君は腕組みをして困ったように唇を尖らせた。


「ホントだねー。あんまり物を置いてないように見えるのにね」

「取りあえず、こいつは美月ちゃんの所に置いて行くとして」

そんな薄情なセリフと共に、私の膝の上に“ボスン!”と置かれたのは、ナマケモノのぬいぐるみ。


「えー? 私の部屋、狭くなっちゃうじゃん!」

笑いながらその顔を見上げる私に、稜君はいたずらっ子のような笑顔を浮かべていた。


引っ越しをする為に戻って来た稜君は、こうしていると、だいぶ落ち着いているように見えるけれど、時々、何かを考え込むようにボンヤリとどこかを眺めていたりする。


幸か不幸か、復帰したバートもあまり調子がよくはない。

だから、稜君の出場機会が以前にも増して減るという事もなく。

かと言って、稜君がその現状を喜ぶような人でもないから、すごく難しいところなのだと思う。


あれから私も、向こうで出来る仕事を探してはいるけれど、日本でいつものように忙しく業務をこなしながらだと、それもなかなか上手くいかない。


大学時代、幸いなことに商業英語の資格をいくつか取っていたから、それが少しは役立つとは思うんだけど……。

それでも、日本人を雇ってくれる仕事にどんな物があるのか――それさえもしっかりと把握しきれずにいた。


正直なところ、私自身も少し焦っている。

せめて仕事が決まってから話そうと思っていたから、稜君には、まだイギリスに行く事は話していない。

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