Do you love“me”?
「そう言えば、“真由美さん”って最上さんの彼女なんですか?」
あの苛つきを蒸し返したくはないけど、やっぱりちょっと気になって訊ねてみる。
「あー……。彼女と言うか、婚約者ですねー」
「はぁ、そうですか」
婚約者って。
呆れて、もう怒る気にもならない。
「でも大丈夫ですかね?」
「何がですかー?」
「だって、バレたらケンカになるんじゃ……?」
婚約者がいるのを知らなかったとはいえ、“真由美さん”の気持ちを考えるとちょっと。
彼女の知らない所で二人で食事をしたという時点で、やっぱり申し訳なく思ってしまう。
「あー、それは平気です!」
なのに、あっけらかんとそう言い放った稜君。
「それは……ナゼ?」
「だって、真由美さんが来たっていうの、嘘なんで!」
元気に言い切った稜君は、なぜか言っている――というか、やってしまった――事とは正反対の、爽やかな笑顔を私に向けていた。
「えぇっ!? だっ、大丈夫なんですかっ!?」
思わず大声を上げてしまった私を、ちょっとビックリした顔で見た彼は、
「んー。まぁ、大丈夫でしょ!」
首を傾げ、上に視線を向けて考えた後、あっけらかんと笑ったんだ。
「あの人だってバカじゃないですから、真由美さんがその話題に触れてこないのであれば、自分からそれには触れないでしょ」
「……」
「後ろめたい事があるのであれば、尚更」
稜君は少しだけ困ったような笑顔を浮かべて、小さく溜め息を吐いた。
「あの人も、昔はあんなんじゃなかったんですけどね」
「え?」
続けざまにそんな言葉を私に落として、大きな音を立てながら頭上を通り過ぎていく飛行機を眺めていた。
「最上さん、昔からすごい大切にしてた幼馴染がいるんですよ」
突然そんな話しを始めた稜君に、私はどんな反応をすればいいのかがわからなくて……。