Do you love“me”?

それでもやっぱり、また同じ事が繰り返される。

走っても間に合わない。

……どうすれば。

顔を上げた私は、周りを見廻した。


もしかしたら、駅から少し離れた場所ならタクシーが拾えるかもしれない。

そう思って、駅前の大通りを抜け、駅に戻ってくるタクシーが通りそうな道を目指す。


もうヤダ。

どうしてこんな大事な時に!!

泣きそうになる気持ちを必死に抑えて走り回り、奇跡的に見つけた空車のタクシーに乗り込んだ。


「すみません!! 取りあえず国道の方にお願いします!!」

あまりの剣幕に、運転手さんは一瞬たじろいだ様子を見せたけれど、今はそんな事を気にしてはいられない。


「こんな時に申し訳ないんですけど、出来るだけ急いで下さい!!」

けれど――。

運転手さん申し訳ないと思いつつも、何度もそう言って急かす私の目の前に、また信じられない光景が広がった。


「あー、事故ですかねー?」

どこか呑気にも思える運転手さんの言葉に、私は反応出来なかった。


目の前の道路には、数え切れない程の赤いランプが光る。

立ち往生するたくさんの車と、時折鳴らされる乱暴なクラクション。


「初雪だからなぁ……」

そんな運転手さんの独り言が、どこか遠いところで聞こえている。


「……すみません、降ります!!」

これは見るからに、すぐに収拾がつく状況ではない。

こうしている間にも、時間はどんどん過ぎていて、ここに留まっているのは賢明ではないと思った。


「ここからだと、まだ遠いですよ?」

「でも……車、動きそうにないし……」

半泣きでそう言った私に、もう何も言えなくなった様子の運転手さんは、私の手からお金を受け取ると、

「お役に立てなくてすみません。お気を付けて」

そう言って、優しく微笑んでくれた。

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