Do you love“me”?


前にも、こんな風に走った事があった気がする。

あれは稜君のおばあちゃんが亡くなってすぐの試合の時だった。


あの時も稜君に逢いたくて、少しでもいいから、支えになりたくて。

とにかく傍にいたかった。


「……っ」

何も変わっていない。

溢れてしまう涙を拭って、必死に走る。


やっぱり離れたって、私はずっとずっと、稜君が大好きなんだ。

今日逢えたら、稜君にちゃんと気持ちを伝えよう。

稜君の為じゃなくて、私が稜君の傍にいたいんだって。

どうしても、傍にいたいんだって――……。


「はぁ、はぁ……」

ずっとずっと、走り続けた。

パンプスを履く足の踵は血が滲んでいて、少し前までジンジンと痛んでいたけれど、今はもうそんな感覚さえない。


だけど、そんなのどうでもいい。

とにかく、稜君に逢いたい。

溢れている涙をまたグッと拭って、やっと辿り着いたマンションを見上げる。


急がないと……!!

寒さのせいなのか、ずっと走ってきたせいなのか――それとも、緊張のせいなのか。

震える指が、オートロックの解除の邪魔をしてもどかしい。

何とか差し込んだ鍵を回し、エレベーターのボタンを押す。


早く、早く。

息を吐き出す度に痛む胸を押さえながら、あまりに遅く感じるエレベーターの動きに、身体がそわそわと落ち着かない。

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