Do you love“me”?
稜君の部屋のある階に到着した瞬間、エレベーターを飛び出して、あの角部屋のドアの前で立ち止まった。
もうすぐ逢える。
ドキドキと音を立てる心臓。
その動きは、さっきと同じなのかもしれないけど……。
稜君に逢えると思うと、少しだけそこが温かくなるような気がした。
一度大きく深呼吸をして、ゆっくりとドアノブに手を伸ばし、力を込める。
いつものようにゆっくりとそれが下に回される事を想像しながら。
――だけど。
「……え?」
いつもとは違う感覚と“ガンッ”という音に、私は一瞬、何が起こったのか解らなかった。
ドクンドクンと、さっきよりももっと大きく脈打ち出した心臓に吐き気さえ覚える。
「イヤだ……っ」
もう一度ドアノブを握る手に力を込めたけれど、同じ音が響くだけで、その扉が開くことはなかった。
そんなはずない。
小さく頭を振った私は、ポケットから鍵を取り出して、カタカタと震える手でそれを鍵穴に差し込み、回す。
――カチャン。
静かな廊下に響いた、開錠の音。
鍵が、閉まっていた?
まるで何かを感じ取ったように、また涙がボロボロと頬を伝い落ちる。
そんなはずない。
そう思う気持ちが半分。
残りはもう、ただただ祈るような、そんな気持ち。
だけど、ゆっくりと扉を開いた瞬間、私はその場に座り込んでしまった。