Do you love“me”?

別に後ろめたい事なんてないんだけど、何となくこの状況で出てもいいのかがわからなくて、思わず黙り込んだ。


「彼氏サンですか?」

そんな私に、少し微笑みながら訊ねてきた稜君。


「あー……はい」

「どうぞ! 俺、向こう行ってますから」

バタバタと身体に付いた草を払いながら立ち上がった稜君は、さっきバイクを停めた場所に向かってゆっくりと歩き出した。


携帯を握りしめたまま、私は何故か、しばらくその後ろ姿から目が離せないでいた。

だけど、手の中の携帯は鳴り続けたまま。

「ふー……」

小さく息を吐き出し、通話をタップする。


「美月?」

「うん」

久し振りに聞く、彼氏の声。

きっと、さっき送ったLINEのメッセージを見たんだろう。


「なかなか連絡出来なくてごめんな」

「ううん、平気! だって、秀君が大変なのわかってるし!」

本心だけど、少し淋しい気持ちを隠して、そう言葉を口にする。

いつから私は、自分の気持ちをちゃんと伝えなくなったんだろう……。


「ありがとな。美月がそう言ってくれるから、実験も頑張れるよ」

嬉しそうにそんな事を言うから、私はやっぱり“淋しい”なんて言えない。


「もうゴハンは終わったの?」

「あー、うん。今、そのままの勢いで、ちょっと癒しスポットに連れて来てもらってる」

「そっかー。そりゃいいな」

「……」

男の人と食事に行くって言ったって、秀君はそんなこと気にしない。

しかも、食事の後まで一緒にいるのに……。


楽でいいけど、正直なところ、ヤキモチくらいは妬いて欲しいと思う気持ちもどこかにある。

だけど、そんな私の気持ちになんて気付かない秀君は、ここ最近の自分の近況を何故か事細かに話し、

「じゃー、まだ実験が残ってるから」

そう言って、名残惜しさも感じさせず電話を切ったんだ。

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