Do you love“me”?
たとえ素っ気ないものだったとしても、久し振りの彼氏からの電話。
嬉しいはずなのに……。
それなのに、彼の声を少し遠いところで聞きながら。
私は、バイクに寄りかかって、星の見えない夜空を見上げる稜君の姿を見つめていたんだ。
「……」
もうとっくに切れてしまった電話。
それを耳から離せないまま、今日あった事を少し思い出していた。
嫌な事がいっぱいあったはずなのに、思い出すのは、何故か稜君の笑顔ばっかりで……。
胸が、ほんの少し熱くなる。
「はぁー……。もー、なに考えてんの!」
大きく息を吐き出した私は、まるで自分の中に芽生えた小さな何かを払拭《ふっしょく》するようにそう呟き、携帯をしまうと稜君の元に向かった。
「ごめんなさい。お待たせしました!」
「いえいえ。じゃー、そろそろ帰りましょうか!」
笑って声をかけた私に、稜君もにっこりと笑い返してくれた。
――この時、本当はもう気付いていたんだ。
突然湧いてしまった、稜君へのほんの少しの特別な気持ち。
だけど、それは押さえこめる程度の気持ち。
私には、大好きな彼氏がいる。
それを壊す必要なんて、どこにもない――……。