Do you love“me”?


「稜君?」

「なーに?」

「……何か、あった?」

声がよく響く、湯気で真っ白になったバスルーム。

俺の足の間に向かい合って座る美月ちゃんが、どこか不安そうに顔を覗き込んだ。


「何もないよ?」

「……」

「え?」

誤魔化し笑いを浮かべる俺の言葉に、ちょっと頬っぺたを膨らませたキミは、お風呂の熱で、いつもより紅く色付いた可愛らしい唇を尖らせる。


「ヘン」

「へっ?」

「稜君、変っ!!」

こう言っちゃ何だけど、普段はどちらかと言うと鈍くて、そそっかしくて、勘違いも多くて……。

そんな子なのに、俺の事となると妙に鋭い。

キミに嘘なんて吐きたくないし、絶対に誤魔化せないのは分かっているから。


「後で話すー……」

一瞬にして眉をハの字にした美月ちゃんは、小さな頭をポンポンと撫でた俺を、心配そうに見上げる。


「悪い話?」

「あぁっ!! 違うから! むしろ、素敵な話だからねっ!!」


――“素敵な話”って。

だけど、そんなよくわからない言葉を口にした俺に、美月ちゃんは心底ホッとしたような笑顔を浮かべ、

「そっかぁー! じゃーよかったっ!」

にっこりと微笑み、そんな言葉を口にする。


「……あーもー」

だからダメなんだ。

天井を仰いだ俺が、可愛すぎる美月ちゃんを抱き寄せると、彼女は目を見開いて驚きの表情を浮かべた。

そんな顔したって、無理なものは無理。

お風呂の熱さで、いつもよりも紅くなったその唇を塞ぐ。


「んっ!……んん!!」

僅かに開いた唇の隙間に舌を滑り込ませ、絡め取るように深く深くキミに口づけをすると、熱と香りに頭がクラクラする。


「のぼせちゃうね」

スッと唇を離し、笑いながらそう言った俺に向けられるのは、美月ちゃんのトロンとした瞳。


あー、やばい。

自分で蒔いた種な気はするけれど、無自覚な美月ちゃんだってちょっと悪いでしょ!?


――でも。

今は頑張ってガマンしなきゃだ。


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