Do you love“me”?

何とか無事にお風呂から出ると、部屋に小さな電子音が響いていた。

これは、美月ちゃんの携帯の着信音。

どうやら仕事の電話だったらしく、通話を終えた美月ちゃんは、髪も乾かさないままバタバタと支度を始めた。


「ごめん。ちょっとだけ、仕事してくる!」

そのまま、ポカーンとしていた俺の「送って行く」という言葉に「サラが迎えに来てくれるから、大丈夫!」と返事をするや否や、家を飛び出して行ってしまった。


「……」

えぇっと……。

予想外の事態に、ちょっとビックリ。

でも、まだ何て言うかも考えていなかったから、丁度よかったのかもしれない。


「あー……どうすっかなぁ」

どうしよう、どうしよう。

考え込んで目を閉じても、浮かんでくるのはキミの笑った顔ばっかりで……。


「よしっ!」

一度大きく息を吐き出して、勢い良く立ち上がる。

そのまま自室に駆け込んで、机の引き出しに隠しておいた小さな白い箱を取り出すと、それをポケットにねじ込んで、バイクに跨った。


見てすぐに、絶対美月ちゃんに似合うと思って、ずっと前に買っていたエンゲージリング。

これを見たら――キミはいつもみたいに嬉しそうに笑ってくれるかな?


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