Do you love“me”?


「Don't work too hard!」

多分まだ仕事を続けているのであろう同僚に、笑顔でそんな労いの言葉をかけて、扉から出てきた美月ちゃん。

バイクを停めて、フェンスに寄りかかって立っていた俺に気付いたのは、扉を出た瞬間だった。


「稜君、迎えに来てくれたの!? てゆーか、いつから待ってたのっ!?」

言うなり、慌てた様子で俺に駆け寄って、その温かい小さな手で頬っぺたを包み込む。


「……」

動けないでいる俺の顔を覗き込むと、

「稜君? 凍っちゃった?」

またそんな可愛い言葉を、真顔で口にする。

そんなわけないでしょ。


「ちょっと、緊張してるだけー」

「へっ?」

笑いながらそう口にした俺に、大きくてキレイな瞳を瞬かせる美月ちゃん。

そんな彼女の右手をそっと掴んで――……。

その上に、小さな箱を置く。


「え?」

「開けてみてー」

当然なのかもしれないけれど、突然手渡された“謎の小箱”に、美月ちゃんはパチパチと瞬きを繰り返す。

俺は俺で、本当は心臓がドキドキしてどうしようもないくせに、平静を装ってみたりして。


「……」

だけど、不思議な空気を感じ取ったのか、ゆっくりと視線を落とした美月ちゃんは、指先に力を込めて、そっとそれを開けた。


瞬間、キミの瞳から零れ落ちたのは――ダイヤなんかより、もっともっとキラキラした大粒の涙。


「美月ちゃん」

「……ん」

ゆっくりと向けられたその顔に、思わず笑いが漏れてしまった。

目の前には一生懸命、涙を堪えようとして、ちょっとブサイクになった美月ちゃんの顔。


そんな顔でも、キミはどうしようもないくらい可愛いくて、本当に困る。


< 395 / 397 >

この作品をシェア

pagetop