Do you love“me”?
「Don't work too hard!」
多分まだ仕事を続けているのであろう同僚に、笑顔でそんな労いの言葉をかけて、扉から出てきた美月ちゃん。
バイクを停めて、フェンスに寄りかかって立っていた俺に気付いたのは、扉を出た瞬間だった。
「稜君、迎えに来てくれたの!? てゆーか、いつから待ってたのっ!?」
言うなり、慌てた様子で俺に駆け寄って、その温かい小さな手で頬っぺたを包み込む。
「……」
動けないでいる俺の顔を覗き込むと、
「稜君? 凍っちゃった?」
またそんな可愛い言葉を、真顔で口にする。
そんなわけないでしょ。
「ちょっと、緊張してるだけー」
「へっ?」
笑いながらそう口にした俺に、大きくてキレイな瞳を瞬かせる美月ちゃん。
そんな彼女の右手をそっと掴んで――……。
その上に、小さな箱を置く。
「え?」
「開けてみてー」
当然なのかもしれないけれど、突然手渡された“謎の小箱”に、美月ちゃんはパチパチと瞬きを繰り返す。
俺は俺で、本当は心臓がドキドキしてどうしようもないくせに、平静を装ってみたりして。
「……」
だけど、不思議な空気を感じ取ったのか、ゆっくりと視線を落とした美月ちゃんは、指先に力を込めて、そっとそれを開けた。
瞬間、キミの瞳から零れ落ちたのは――ダイヤなんかより、もっともっとキラキラした大粒の涙。
「美月ちゃん」
「……ん」
ゆっくりと向けられたその顔に、思わず笑いが漏れてしまった。
目の前には一生懸命、涙を堪えようとして、ちょっとブサイクになった美月ちゃんの顔。
そんな顔でも、キミはどうしようもないくらい可愛いくて、本当に困る。