Do you love“me”?
近くて遠い距離


七月のある日。

私はおねぇーと一緒にI駅に向かう電車に揺られていた。


「私までいいのかなぁ」

「いいの、いいの!」

不安げな私をよそに、楽しげなおねぇーの手には、デパ地下で買った“手土産”という名の、多分自分が食べたいだけだろうキレイな色のゼリーとたくさんの食材。

そして何故か……ワインの入った袋を、カサカサさせている。


「航太君、練習何時までって言ってた?」

「ん~、今日は早めに終わるとは言ってたけど、正確な時間までは」

「そっかー」

「でも、川崎君の家のカギ預かってるから大丈夫!」

「……いや、そういう問題じゃないんだけどね」

私は今、何故かおねぇーと一緒に、稜君のマンションに向かっている。

入籍を済ませて、引っ越しも終わったおねぇーと航太君。

だけど、明後日あるA代表の試合の為に、航太君はバタバタと帰国。

当然、おねぇーも一緒に。

二人は今夜、稜君の部屋で夜ゴハンを食べる事になっているらしい。

そこまでは、わかる。


――でも。

「何で……私も?」

そう思うのは、私だけ?


「えっ!? もしかして、行きたくないっ!?」

「そういうわけじゃないんだけど」

「じゃーよかった!」

私の返事に、ニッコリと笑ったおねぇーは“そういえば……”と思い出したように呟いて、

「川崎君と、時々LINEしてるんでしょ?」

そんな事を訊ねてきた。

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