Do you love“me”?
「あのね、今おねぇーと稜君の部屋の玄関まで来たんだけどさ、」
「うんうん」
「本人がいないのに、ちょっと入り辛くてね……」
気まずそうに話すと、稜君からは思ってもみない返事が返ってきた。
「あー、代理人がいるから大丈夫だよ!」
「だ、代理人?」
「うん! リビングのドア開ける時、気を付けてね」
そんな意味のわからない事を言ってくるから、私の頭の中はハテナでいっぱい。
「じゃー、あと三十分くらいで帰るから!」
そう言った稜君は、私の頭の中のハテナを消し去る事なく“ヨロシクね~”と、電話を切ってしまった。
「……」
「川崎君、なんだって?」
「代理人」
「は?」
「代理人がいるから、大丈夫だそうです」
「はい? 代理人?」
「うん」
「誰……それ」
「わかんない」
「……」
「……」
しばらく無言で見つめ合ってみたものの、いつまでも玄関にいるわけにもいかないし。
「取りあえず、お邪魔しよう」
「う、うん」
おねぇーの提案に頷いた私は、意を決して靴を脱ぎ、
「お邪魔しまーす……」
廊下の突き当たりの、“代理人さん”がいるというリビングであろう部屋に向かった。
「リビングのドア開ける時、気を付けてって言ってた」
「えぇー、なにそれ。やめてよー……」
何を想像しているのか、おねぇーが背後に隠れるから、強制的に先頭に立たされた私はゴクリと唾を呑み、ドアノブに手をかけてゆっくりと回す。