Do you love“me”?
「たっだいまぁ~!」
「――っ!!」
リビングのドアが開いたのと同時に聞こえた、稜君の元気な声に、身体がビクッと飛び上がった。
「お、お帰りなさい」
その言葉がちょっと気まずい感じになってしまったのは、私がリビングの床に寝転がった状態だったから。
「ただいまっ! おぉー!! 美月さんに遊んでもらってたのかー?」
ついさっきまで、私の正面で楽しそうにはしゃいでいた小ブタちゃんは、稜君の気配がした途端ドアにダッシュ。
今は、彼に高い高いをされていて……。
その場に置いてきぼりを喰らった私は、一人床に寝転んでいる状態。
「ただいまー……って、美月さん?」
稜君に続いて部屋に入って来た航太君は、困惑顔だし。
「お帰りー!」
「おー、ただいまー」
キッチンからパタパタと出て来たおねぇーが、航太君に話しかけたせいで、状況説明をするタイミングを逃したし。
「あっ! ちょっと美月っ!! あんた人んちで寛《くつろ》ぎ過ぎ!!」
しかも、何故か怒られてるしね。
「違う違う! 美月さん、こいつと遊んでくれてたんだよー!」
稜君の言葉に、うんうんと思いっ切り頷く私。
稜君のおかげで、航太君はやっと納得したような顔をしたけど、
「え!? そうなの!? てか美月、あれからずっと遊んでたの……?」
おねぇーには、ちょっと呆れた顔をされた。
そりゃそうだ。
時計を見たら、ここに来てから優に一時間は過ぎていて……。
「ちょっと可愛すぎて」
起き上がって苦笑いを浮かべる私を見て、稜君は一人大笑いをした。
「良かったなぁー、ポーキー!」
小ブタちゃんの頭をぐりぐり撫でる稜君は、凄く楽しそう。
「名前、ポーキーっていうの?」
そう口にした私に、視線を移した稜君は、
「そっ! 小ブタのポーキー」
にっこり笑って、そう答える。
「ホントは、航太に名前付けてって頼んだんだけどさぁ……。航太、何て付けようとしたと思う?」
「え? 何だろ」
突然のクイズに、首を傾げてちょっと考え込むけれど、特に案もなく。
「……わかんない。なに?」
「“ポーク”だよ!? 信じらんないよね。センスの欠片も感じられないよね」
その解答と、眉間に皺を寄せる稜君に大笑いした私の背後から、お料理をテーブルに運んで来た航太君が笑いながら声をかけた。
「うっせ! “ポーク”も“ポーキー”も大して変わんねぇよ!」
「いや、マジで違うからね? “ポーク”って、豚肉だよ!? 有り得ないでしょ!!」
何だか、いつもよりも幼く見える稜君と航太君の様子が面白くて、私はしばらく笑い続けていた。