Do you love“me”?
「すいません。うちの姉が……」
「いえいえ。楽しいよー。あんな美青ちゃん、初めて見た」
部屋の中の二人を見ながら微笑む稜君は、確かにすごく嬉しそう。
だけど、その稜君の横顔を見ていると“辛くないの?”なんて、余計な言葉が口を吐いて出てしまいそうになる。
――おねぇーの事が好きな稜君。
余計なお世話なのは、わかってる。
だから何も言わないし、言えない。
でも私だったら、きっとあんなに幸せそうな二人を見るのは、辛くてしょうがない。
それは私が捻くれてるからなのかな?
「あの二人」
「え?」
急に声をかけてきた稜君に、つい大きく反応してしまう。
「あの二人、ホントに面白いよね」
「そう……だね」
「普段のアイツしか知らないヤツが、あんな航太見たら、絶対“誰だー!?”って言うだろうなー」
「……」
「それに、美青ちゃんも! 美青ちゃん、仕事してる時ってすごい凛としてて、男前でさ」
仕事中のおねぇーの姿を思い浮かべているのか、クスッと笑った稜君。
「最初は取っつき難《にく》そうかなって思ったんだけど、話したらすっごい優しくて」
「……うん」
「でも航太と一緒だと、あんな風になっちゃうんだもんね。何かいいよねー」
目を細めながらそう言った稜君に、伏せていた瞳をパッと向けてしまった。
「ん? なーに?」
「ううん……。何でもない」
私は、考えてしまったんだ。
稜君が言った“いいよねー”という言葉が、一体どこにかかるものなのか。
それはおねぇーに対して?
それとも……航太君に対して?
そんな事を思ったら、胸がギューッと締めつけられて、何だか泣きそうになった。
「そう言えばさー」
だけど隣に立つ稜君は、いつもと同じ口調で、何かを思い出したように話しを続ける。
「航太って、美月さんに敬語なんだね」
「あー……。そうなんだよね」
気持ちの揺れを悟られないように、少しだけ口角を上げて、口元を緩めた。
「航太君はお義兄ちゃんだけど、私の方が一個だけ年上だから。多分、昔の癖……かな?」
「そっかー。美月さん、俺らより年上だもんね」
“美月さん”。
いつもは、そんなに気にならないその言葉が、何だか妙に引っかかる。
「普段はすっかり忘れてるけど、美青ちゃんも年上だもんねー」