Do you love“me”?
ドクン――。
この人の言葉は、どうしてこんなに優しく心に響くんだろう。
稜君の言葉を聞いた瞬間、キリキリと痛んでいた私の胸からスーッとそれが消えていって、新しく生まれたのは、フワフワして温かい、なにか。
同時に頭に浮かんだのは、秀君の顔だった。
本当は、この温かい気持ちが何なのか、自分でも気付いているんだ。
でも私は、その気持ちに名前を付けちゃいけない。
――だけど。
こうして誰にも気付かれる事なく、こんな気持ちを抱く事も、最上さんとやってる事は変わらないのかな?
「やっぱり、生意気だって思う?」
急に黙り込んだ私を、ちょっと困った顔のまま覗き込んだ稜君の声は、顔と同様、困った声。
「そんな事、思わないよ! 私は“美月ちゃん”の方が嬉しいし!」
それを聞いた稜君は、にっこりと優しく笑う。
だけど、おねぇーの事が好きな稜君。
メットからふわりと香った、あの甘い香水の匂い。
「じゃー、これからは“美月ちゃん”ね!」
こうして目の前で微笑む稜君も、最上さんや私と同じように、口に出す事の出来ない想いを抱いてるのかな?
「うん……」
真っ直ぐな視線に耐えきれず、視線を足元に向けた丁度その時、目の前のサッシがカラカラと開けられて、ちょっとぐったりした様子の航太君が顔を出した。
「悪い。美青寝たから、連れて帰るわ」
「おー。ちゃんと“美青! 愛してるよっ!!”って言ってあげた~?」
「万が一言ってたとしても、お前にだけは報告しねぇし」
そう言って“くくくっ”と笑う航太君。