Do you love“me”?

「す、すみません。お邪魔します……」

花火大会、当日。

何度も断ったのに、何故か頑として私の申し出を聞き入れない結衣に負け、結局こうして二人のお邪魔をする事になった。

しかも彼氏さんがまたいい人で、申し訳ない気持ちがますます膨れ上がる。


「いえいえ、いいですよ! 浴衣の女の子を二人も連れて歩ける機会なんて、そうそうないですからー」

謝る私に、そんな温かい言葉をかけてくれるんだっ!!

それでもやっぱり、その申し訳ない気持ちは消えないワケで。


「そうそう! 気にしないで!! たまはコイツにもいい思いをさせてあげて~」

彼氏にパンチをくらわせている結衣を、オズオズと見上げる。

気持ちは本当に嬉しいけど、実は急用とか言っていなくなろうと思っていた。

だって、やっぱりこういうイベントは、彼氏と二人の方がいいと思うんだよねぇ。

そんな事を考えながら、いなくなるタイミングを覗っていたんだけど。

「……」

そんなタイミングなんて、そうそうやってくるもんじゃない。


う~ん。

ありがちだけど、電話がかかってきたフリでも……。

そう思った私は、携帯を取り出す為に、持っていた巾着に手を入れた。


――その時。

「きゃっ……」

足元の階段に気付かずに躓いて、身体が前に傾いていくのに、浴衣のせいで、いつものように足が前に出せない。


“転ぶ!!”

痛みを覚悟して目をつぶった瞬間、

「よそ見してたら危ないですよー」

そんな低い男の人の声と共に、後ろから掴まれた私の腕。

そしてそのまま、グッと引き上げられる。


「――っ!!」

驚いてバッと振り返った私の視線の先には、キャップを目深にかぶった男の人が立っていた。


「す、すみません。ありがとうございます」

申し訳ないやら恥ずかしいやらで、慌てて頭を下げたのに、その男の人は、私の様子を見てクスクスと笑っている。

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