Do you love“me”?

「あ、あの?」

そんなに笑うほどの事だったかな?

怪訝な声とともに、首を傾げた私に向かって、その男の人が、またゆっくりと口を開いた。


「美月ちゃん、浴衣も似合うね」

「……えっ!?」

その声は、さっき聞こえた声とは全然違くて。


「りょう……君?」

「ピンポーン!」

目の前で、ちょっとキャップを上げ、いつもと同じ口調でおどけたその人は、稜君だったんだ。


「何でここに?」

ビックリしすぎて瞬きを繰り返す私を見て、彼は楽しそうにその口角を上げる。


「ちょっと美月!! 大丈……ん?」

私が転びそうになった事に気付かずに、少し先まで歩いていた結衣が私の元に駆け寄って、稜君の存在に気が付いた。


「あれ!? 稜く……っ」

「しー!!」

結衣の大きな声に、焦った様子の稜君は、立てた人差し指を自分の唇に当て、その言葉を遮る。


「ご、ごめんなさい……」

「いえいえ。えっと、今日は三人で?」

バツが悪そうな結衣に彼は少し笑ったあと、背後の彼氏さんの存在に気付いて首を僅かに傾げ、当然と言えば当然の疑問を口にした。

そこは私的には極力触れて欲しくなかったところなんだけどね……。


「そうなんです。美月、今日彼氏にドタキャンされて」

「ちょっと、結衣!!」

それなのに、不必要な暴露をされて、思わず慌ててしまった。

そんな私の様子を特に気に留める事もなく、ちょっと考え込んだ稜君は、私に視線を移して、

「ちょっと待ってて!」

そう言うと、後ろにいる四人組の男の子の元に歩いて行った。


その集団と少し話した稜君は、何故かその輪から外れながら手を振ると、ゆっくり私達の所に戻って来て。

「美月さん、借りて行ってもいいですか?」

彼氏の前にもかかわらず頬を赤らめる結衣に、そんなとんでもない発言をした。


「えっ!?」

「どうぞどうぞ~!」

驚いて目を見開く私と、何やら楽しげな結衣。

そして、今更稜君の正体に気付いて固まる、結衣の彼氏。


三者三様の私達をクリクリした瞳で見回した稜君は“じゃー、お言葉に甘えて!”と、私に向き直り、

「一緒に行こう?」

にっこりと笑うと、戸惑う私の腕を優しく掴んで、人混みの中にゆっくりと足を踏み出したんだ。

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