Do you love“me”?

「友達、よかったの?」

「う~ん。今回は不可抗力という事で」

私の質問にちょっと気まずそうに笑った稜君は、言葉とは裏腹に、何だか少し楽しそう。


「ごめんね?」

「え? 何でー?」

「だって、気を遣ってくれたんでしょ?」

きっと結衣カップルと――私に。

そんな私の心配を余所に、一瞬キョトンとした稜君は、ちょっと困ったように笑う、


「それはちょっと違うかも」

だけど次の瞬間には、コロッとその表情を変え、今度はいたずらっ子のように笑って言ったんだ。


「敷いて言うなら……ただの、私欲?」

「え?」


“私欲”とは……?

眉根を寄せた私に“こっちの話!”と告げると、私の顔を覗き込みながらにっこり微笑んだ。


「さてっ! まだ花火まで少し時間あるし、ちょっと歩ける?」

「う、うん」

「よし! じゃー、行こっか!」

何だかよくわからないまま、結局一緒に行く事が決定してしまったらしく……。

オレンジのライトを灯すたくさんの屋台の中を、二人で並んで歩く。


隣の彼の存在はまだ若干気になるものの、さっきよりはだいぶ落ち着いた心臓。


「お祭りって、楽しいはずなのに、ちょっと切ない気持ちになる時がある」

ライトに照らされるたくさんの人達の笑顔を見ながら、ポツリとそう口にした瞬間、稜君が少し驚いたような顔で私の瞳を見つめた。


「それは何で?」

「何でだろ……。よくわからないんだけど、昔からそう」

「……」

「終わるのが分かってるからかな?」

自分の言葉に確信も持てないまま首を傾げると、目を細め、柔らかい表情を浮かべた稜君が口を開いた。


「お祭りが終わるとさ、夢から覚めて、一気に現実に引き戻されちゃう感覚がする」

その言葉は“正にその通り!”という感じで、心の中にあったモヤモヤが一気に晴れていく。

< 64 / 397 >

この作品をシェア

pagetop