Do you love“me”?

「え?」

隣に立つ稜君が少し驚いたような声を上げ、私の視線を辿る気配がした。

だけど、それを誤魔化すことさえ出来ないくらい、私は動揺していた。


「しゅう……君?」

たくさんの人が犇《ひし》めく、石畳の上。

私は、どうして見つける事が出来たんだろう?

何で見つけてしまったんだろう……。


「美月ちゃん?」

その場に立ち止まって動けなくなった私に、稜君が声をかけ、

「み、つき?」

まるで、その声に反応したかのように顔を上げた秀君が、目を見開きながら私の名前を呼んだんだ。


「秀君」

「……」

私の呼びかけに気まずそうに表情を歪め、一瞬言い訳でも考えるように、視線を上に向けた彼の隣……。

そこには、黒地に鮮やかな赤い椿柄の浴衣を着た、見た事のない女の人が寄り添うように立っている。


「秀君?」

私の声に、やっと開いた秀君の口から聞こえたのは、大きな溜め息。


――そして。


「何でいんの?」


面倒臭そうに放たれた、そんな言葉。


「え……?」

混乱した頭で、一生懸命彼の言葉への返事を探すけれど、真っ白な頭では何も考えられるはずもない。


「来ないって言ってたじゃん」

そんな簡単な言葉の意味だって、理解出来ない。


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