Do you love“me”?
「そんなにどうするの?」
「う~ん……。でっかい水槽買って、その中で飼う」
あれから――しばらくの間、金魚すくいに没頭した稜君の手には、透明な袋に入れられた大量の金魚達。
「俺、ダメなんだよねー。金魚すくいのプールとか見ると、窮屈そうで、可哀そうだなぁって思っちゃって」
困ったように笑った稜君は、もう次の瞬間には楽しそうに笑って次の話を始めていて、本当に表情が豊かだと感心してしまう。
「実家の池にも、凄い数の金魚いてさー」
「それもお祭りの金魚?」
「そうそう! ちっちゃい頃とか、毎年大量に連れ帰って、親に怒られてたワケだよ。“あんた、これ以上どうするの!”って」
「あははっ! 何となく想像出来るかも!」
多分、お母さんのモノマネであろうその口調に、思わず笑ってしまう。
「だけどさ、そうするといっつも、ばーちゃんが俺の味方してくれてさぁー。“稜は金魚を助けたのよねー”って」
初めて聞くお婆ちゃんの話。
お婆ちゃんとの思い出を話す稜君はの横顔は、とっても嬉しそうで、幸せそうで。
「お婆ちゃん、大好きなんだね」
「うん。俺、超ばーちゃんっ子!」
一目瞭然でそれがわかってしまうくらい。
キラキラとした笑顔を向けるから、何だか可愛くて、私の頬まで緩んでしまう。
「笑ってるし! まぁいいけどさぁ~」
下を向きながらクスクスと笑う私に、少し不貞腐れたように唇を尖らせた稜君だったけど……。
「……」
急に無言になって、その表情をスッと変えた。
何事かと思って、彼の視線を辿ろうとした瞬間――……。
私の手が、稜君の温かい大きな手に、そっと包まれた。
「え……?」
驚いて、一度は手元に落とした視線を、バッと上げた先にいる稜君は、
「ごめんね。でもちょっとだけ、こうしてよう」
そう言って、にっこり笑う。
「でも、」
“好きな子だけ”。
あの時の稜君の言葉が頭を過ぎって、戸惑う私の瞳に映ったのは――……。
「……」
少し離れたその先に、ちょっと気まずそうに――だけど睨むような視線を私達に向ける秀君と、彼の視線の先の私に気付いて、不貞腐れたような表情を浮かべる彼女の姿。