Do you love“me”?
繋いだ手に、ジットリと嫌な汗が滲む。
もう好きだなんて気持ちはなくなってしまったものの、心の整理がまだ出来ているはずもない私が、二人を直視できるはずもなくて。
「大丈夫だよ」
俯いた私の耳に、すぐ隣から、そんな声が聞こえた。
「ちゃんと、前向いて?」
少し低い声でそう言って、私の顔を覗き込むのは、他でもない稜君。
その声に一瞬戸惑ったけど、私を見つめる顔は、いつも通りの優しい彼の顔で……。
「もう、何も言わせないから」
私に言葉を落とすと、手をグイッと引いて、ゆっくり歩き出す。
ドクン。
ドクン。
秀君に近付くにつれて、不快な心臓の音がどんどん大きくなる。
それがきっと、手の平から稜君にも伝わったんだろう。
私の手を、一層強く握った稜君は、距離が縮むにつれて、どんどん気まずそうな表情になっていく秀君の横を、
「美月ちゃん、足元気を付けて」
涼しげな表情のまま、まるで何事もなかったかのように通過したんだ。
その表情に。
その声に。
その言葉に……。
私の心臓がうるさいくらいに、騒ぎ出す。
それは、さっきの――まるで、ドカドカと内側から殴りつけるようなものとは全く違う、心地よい鼓動。
「……」
私は、この人が好きなんだ。
稜君。
“好き”――それをこうして言葉にしてしまった私は、この気持ちを、もう上手に誤魔化せそうにないよ……。