僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「僕、揉んであげましょうか」
「えっ、いいわよ、そういうつもりで言ったんじゃないの」
「僕、いつも母のマッサージしてましたから、上手いですよ。遠慮しないで、ホラ、そこにうつ伏せになって下さい。あっ、ちょっと待って」
僕は弘美さんが肩にかけていたタオルを手に取ると、それを小さく畳んで床のラグの上に置いた。
「ここに額をつけて、手は身体の横につけて、力をぬいてうつ伏せになって」
弘美さんは、半ば強制的な僕の指図に素直に従った。
「う~ん、ほんと、凝ってますね。特にこの腰の部分。こんな風に、変なところに力が入ると、他にも影響するんです。首とか肩とか」
僕は、弘美さんを両足の間に挟みこむように膝を立てると、ゆっくりと手のひらで背中をさすった。
「具合の悪いところって、大体冷たいものなんですよ。血の巡りがよくないっていうか。だから、無理して押すよりも、こうやって、ゆっくり暖めるように……」
僕は手のひらを大きく広げ、弘美さんの腰を包み込む。
「あぁ、気持ちいい。なんか、身体がほぐれる感じ……」
弘美さんの声が暖かくくぐもる。僕は気を良くして、その手を上の方へと移動させる。
首を持ち上げるように引っ張って、そのまま頭を両手で挟み込む。
少し力をこめて頭を押した。
「う~ん、ほんと上手いね」
僕はその手を肩へと下ろす。
手のひらを使って、肩を揉みほぐす。
その後、ゆっくりと背骨にそって親指を這わせる。
弘美さんの身体が少し固くなる。
「ほら、弘美さん、力抜いて」
僕は咄嗟に声をかけ、その手で彼女の肩を掴んだ。