僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

「僕、揉んであげましょうか」

「えっ、いいわよ、そういうつもりで言ったんじゃないの」

「僕、いつも母のマッサージしてましたから、上手いですよ。遠慮しないで、ホラ、そこにうつ伏せになって下さい。あっ、ちょっと待って」

僕は弘美さんが肩にかけていたタオルを手に取ると、それを小さく畳んで床のラグの上に置いた。

「ここに額をつけて、手は身体の横につけて、力をぬいてうつ伏せになって」

弘美さんは、半ば強制的な僕の指図に素直に従った。


「う~ん、ほんと、凝ってますね。特にこの腰の部分。こんな風に、変なところに力が入ると、他にも影響するんです。首とか肩とか」

僕は、弘美さんを両足の間に挟みこむように膝を立てると、ゆっくりと手のひらで背中をさすった。

「具合の悪いところって、大体冷たいものなんですよ。血の巡りがよくないっていうか。だから、無理して押すよりも、こうやって、ゆっくり暖めるように……」

僕は手のひらを大きく広げ、弘美さんの腰を包み込む。

「あぁ、気持ちいい。なんか、身体がほぐれる感じ……」

弘美さんの声が暖かくくぐもる。僕は気を良くして、その手を上の方へと移動させる。

首を持ち上げるように引っ張って、そのまま頭を両手で挟み込む。

少し力をこめて頭を押した。

「う~ん、ほんと上手いね」

僕はその手を肩へと下ろす。

手のひらを使って、肩を揉みほぐす。

その後、ゆっくりと背骨にそって親指を這わせる。

弘美さんの身体が少し固くなる。

「ほら、弘美さん、力抜いて」

僕は咄嗟に声をかけ、その手で彼女の肩を掴んだ。
< 120 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop